記念日の動向:記念日文化レポート その2「日付にこだわることで『プチ記念日』が生まれる」

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全国各地で「まちおこし」「まちづくり」と称して街中でのイベント、催事が盛んに行われている。その中でも日付にこだわった催事の代表格と言えるのが三重県伊勢市の伊勢神宮前の赤福本店で毎月1日に開かれる「朔日餅」(ついたちもち)。
伊勢には毎月1日に早朝から神宮にお参りをする「朔日参り」という習わしがあることから、その参詣客を迎えるために始まったもので毎月1日にその季節ならではの餅菓子を販売する。前夜から大勢の人が月替わりの餅を求めて行列を作る。
商売というよりはこれはもう年中行事、観光行事、地域印象度向上行事のようなもので他の「町おこしイベント」にも大きなヒントになることだろう。

さて、岡山市でも日付にというか開催日にこだわったイベントが活況を呈している。
毎月第1日曜日の朝に市内を流れる旭川の畔、京橋のたもとで開かれる「備前岡山京橋朝市」は1989年9月4日の第1回から何と300回以上も続けて行われ、おかやま自慢の山の幸、海の幸、おいしい物が一堂に会する朝市。この朝市の開催に合わせて前日に市内に泊まる人もいるほどの人気ぶりだ。

また、満月の夜(もしくは満月に近い土曜日)に市内中心部の西川緑道周辺で開かれる「満月BAR」は出来たての料理と美味しいお酒を野外で楽しむイベント。ライブ演奏などもあり、若者を中心に多くの人が集まってくる。

この二つの人気イベントに共通した集客のポイントは「毎月第1日曜日の朝と満月の夜という定められた日時に嬉しい驚き(例えば初めて食べるもの、初めて出会う店など)があり、多くの人々に記憶される存在」という点にある。
そこに参加することは自らの「プチ記念日」であり、記憶された楽しい「プチ記念日」は繰り返し参加したくなる、もしくは参加しないとつまらない日になってしまうかもしれないというリピート性を持っている。
つまり、地域活性化や商店街再生の議論の中で必ず出てくる「いかにリピーターを増やすか」の答えがそこにあるというわけだ。
観光やイベントなどの地域おこしを手がけるときに記念日(=ハレの日)は誘客の大きな役割を担うとともに、これからは「プチ記念日」(=日付のある催事)を作り出す仕掛けが大切になってくるに違いない。
「毎月1日」「毎月第1日曜日」「満月の夜」「「毎年9月31日(10月1日のこと)」「その年の100日目」など、日付とそこに込められた物語にこだわることで、新しい展開が見えてくる。

(記念日文化研究所・上席客員研究員 菅野敦也/所長 加瀬清志)